評価:★★★★ (4.8 / 5)
📢 Amazonでの購入者の声を紹介します
【1】
特装版の感想になります。便利なため電子書籍は買ったけど、周囲の評判が良いため紙の特装版も買いました。本物の博物誌みたいに読み応えがあり、漫画のようなユーモアもあり、とにかく素晴らしいです。何度も読みました。装丁が美しく、こういう本を出せるのは市川先生だけでしょう。内容ですがこれが本当に凄い。奇抜なデザインは全て意図されています。(な、なんだと…)ストーリーだけでなく、登場する物品全て考えて連載を始めたのではないか。通常の漫画家とは視点が大分異なっていて大変興味深いです。突出しているのは、宝石たちをどうやって月人達の世界に受け入れさせるか。全てに工夫を凝らしていて、市川先生のデザインセンスが光る。居住区、食事、衣服、果ては遊園地まで設計し、互いに受け入れやすくさせる。その工夫と思いやりがあったからこそ宝石たちが馴染んだのだ、と納得する。多分人間では異種族にこれ程優しくすることは出来ないだろう。元が同じだったとしても。他人と違う人間を排斥し続けたのが人間の歴史。その反省の遥か上に築かれた未来の社会であり、現代文明より人の心もずっと進んでいる。それを考えると、本編で不幸を負ってしまったフォスにも救いが残されていると思いたい。
【2】
本当は続刊で書きたかったのですが、休載から一年経ち、このモヤモヤを吐き出す場所が他にないのでやむなくここに。読者の誰もが胸糞悪い、辛いという最近(?)の展開、なんで作者はこんな話を描くのだろうと考えたり忘れたりし、結局この物語の生き物すべてに『信仰心』がないからではと思い至りました。エクメアは金剛に祈らせる存在として人間を作ることを考え、その適任者にフォスを選びました。言葉では『人間』と言うけれど、その役割は『救世主』と同義です。フォスは救世主。膠着した現状を打破する存在。その比喩が似合わないのは、月人や宝石達の誰一人も彼を敬わないから。そこに敬愛や尊び、信仰心の元となる感情が皆無なのです。ついでに言うと、フォス自身にも救世主に見合う能力やカリスマ性といった素養がありません。それでも無理矢理周囲を巻き込み、誰かが痛めつけられても前進をやめないから、次第に皆離れていく。作中でも「救世主」のタイトルがついた72話以降、この傾向は顕著になっていきます。そんな彼を救世主に仕立て上げるため、エクメアは『変化』を与え続けて成長を促す。フォスにとっては『試練』の連続ですが、当のエクメアにも信仰心はないから、その間カンゴームとイチャラブしたり優雅にお茶なんか飲んでいる。まるで利用しているかのように思いやりがありません。地球の宝石達も同様。対話もせず打ち砕いたフォスを放置し、自分達は無為に過ごし続ける二百年。月の宝石も月人達も、フォスが失敗したと聞いても誰も助けに行きません。もっとも当人の知らないところで、その他大勢が深刻に悩んだり信じ続けても『救世主』の役には立たないのだから、ある意味彼らは冷静で賢い。でも主人公に感情移入してその有様を延々見続ける読者には、ひたすら胸糞悪い感情が積もり積もるわけです。この『救世主』と『敬わない被救済者』の関係、実は金剛先生の頃から続いています。月人達は、無に帰るために金剛先生に祈ってほしくて様々な方法を試みてきました。その最終型は、金剛が大事にしている宝石達をさらうこと。月に連れ去って粉にして、月の表面に散布する。そんな真似をされたら望みなんて叶えるわけないと普通は考えるのですが、月人には信仰心がないから「金剛に刺激を与える」というやり方しか思いつかない。そして刺激の最上級は苦痛です。ちなみに金剛先生にも信仰心はありません。愛とか壊れたとか色々言ってるけど、金剛先生は「数多の宝石に魅入られて祈ることが出来なくなった僧人」です。言葉のまま解釈すれば、世俗に堕ちて信心を失くした生臭坊主で、「壊れた」というより「救済の力をなくした」方が近いかも。フォスはと言うと、〈最初〉無能だが、根拠のない自信で300年生き続ける。〈合金の腕後〉自分のせいで仲間を失い、一時自信を無くすが立ち直る。〈ラピスの頭後〉知恵を得て承認欲求に飲まれる。〈ボロボロ河童〉自分を認めてくれなかった宝石達をすべて破壊する。……と、数百年の間に様々な変容を遂げますが、彼が信じているもの、周りに認めてほしいものは一貫して『自分自身』です。作者さんは仏教系の学校出身だそうなので、こうした図式は意図して描かれてるのだろうと思います。でも伝え聞く短編集の嗜好から「主人公を痛めつけたいだけの加虐趣味な漫画」だったら嫌だなと思う今日この頃。これは再開してくれないとわからないですね。
【3】
フォスが行き着く地点まで行ってしまいました主人公に肩入れしている分読み手は酷く憂鬱な気分になるのですが、フォス以外の登場人物たちはそれなりに楽しそうに昇華した生活をしているように見えますこのシリアスとほのぼのがうまく絡み合った世界観が未だに続いているのが非常に面白いですイエローとルチルを鑑みても、宝石達は皆どこか人間の感情を持ちだしたのかと思いました現在正反対の道を辿っているシンシャですが、フォスを少しでも救ってくれることを願います先生にもどうか救済が欲しいですね
【4】
正月休み暇で電子書籍で一巻を試し読みしてドはまりしました。アニメは見ていて面白いのは知っていたのですが、アニメ以降のフォスが・・・というのを聞いて原作は食わず嫌い。いやぁ勿体なかったです。全巻思わずまとめ買いしてしまいましたが、正直電子書籍ではなく書籍で買えばよかった・・・それくらいの価値はあると私は思いました。最新刊からは紙で買って、残りの巻数もぼちぼち揃えていこうかな。
【5】
クライマックスを迎えて憎悪と絶望に満ちた物語となった今巻、読後感の悪さが集中する作品となっている宝石達の冷酷さと排他性が強く描かれていて、月人は狡猾で余裕がなく、主人公に救いがない宝石達の行動原理に首をかしげるが、これはきっと元よりそういうものなのだ未来永劫変わることなく、永遠に続く命を生きるものとして生まれた宝石達は、我ら人間は元より、人間と同じように世代を重ねて命をつないでいくアドミラビリスや、嘗て人であった記憶を持ち続ける月人達とも決定的に違うものがある彼らは愛を知らないのだ好意を受けると都合がいいため気分が良くなり、悪意を向けられると破壊されたり環境が厳しくなるので社交性は身に付くだが彼らは世代を重ねないそのために性がなく、子孫を生むために異性を愛する必要がない生まれついてそう出来ている彼らの示す愛情は上っ面のもので、愛により心が揺さぶられ、悲しみ、突き動かされるということはないその心が宝石のように冷たく、終焉を恐れず、時間に無頓着で、変化を嫌い排他的であるのは当然なのだフォスだけが生まれついて特別だったのだこの漫画はその人とは違う生き物の、心の機微がとてもリアルだ唯一人に近い感性を持つ主人公を介して、彼らと世界を描いている
【6】
主人公を滅茶苦茶にするのが性癖な作者さんなのできっとフォスくんはもっと悲劇的なことになるでしょう。フォスくんを応援している、好きな方はこのへんで読むのを止めることをおすすめします。
【7】
電子版での購入を考えている方へ電子版には単行本のカバー下の絵が含まれていないので、個人的には単行本で買うことをお勧めします※以下ネタバレ注意本巻で先生が祈ってしまえば宝石ごと無に帰ることが明かされてしまって、マジで地獄だと思った・・・今までフォスは仲間のために先生を祈らせようとしてきたのに、祈らせたら全部無駄になっちゃうってことじゃないですか・・・というか、カンゴームの今の目的はエクメアと一緒に無に行くことだからって、ほかの宝石たちに祈らせたら自分たちまで無に帰ること知らせないのはひどいと思うカンゴームはエクメアと以上に他の宝石たちとの方が付き合い自体は長いわけなんですよね?完全に他の宝石たちのこと考えていない感じがして悲しかったです・・・あと、バルバタが宝石を元に戻す研究していることを考えると、先生が祈ったら宝石ごと無に帰ることを知っているのはエクメアだけだったのだろうか?バルバタと一緒に研究しているアメちゃんに癒されたので、知らない状態だとうれしい・・・あと、ダイヤVSボルツ戦も地獄でしたね変わったねって言った時のボルツの笑顔と、ボルツを割ったときのダイヤの笑顔の対比がつっらい
【8】
11巻まで通して読んでみて思ったことはフォスの『人の一生』とりわけ情緒の移り変わりを描いているように感じました。自分の欲するところを欲し、それを他人のために為そうとするようになりながらも上手くいかず段々と智恵も授かり上手く立ち回ろうとするも結果は芳しくも無く。今は、社会の仕組み(しかもあまり宜しくない闇の部分)を知り自暴自棄になりかけのティーンエイジャーの時期、みたいな。あれっ…フォスはかなり険しい道を歩まされているのか?今後フォスがどのような人生を歩み、どんな大人になってゆくのか楽しみでもあり恐ろしくもあります。願わくばあのゆりかごの中の幸せだった頃のようになれれば、と切に思いますが多分彼はエクメア達月人が欲するところの『無』になってしまうのだろうな、と想像しました。56億7千万年後位に。
【9】
This arrived earlier than expected and in great condition! The Japanese editions are slightly smaller than the English, but have a beautiful holographic cover.
※この記事は 2025年6月29日 時点の情報です